【あの人107】・・・ 彼とは同じクラスでも無かったし、名前さえも知らない。 専門学校の時に、バンド一緒にやろうと誘ってくれた彼。 ある日、帰省するためだったか、友達のところに行くためだったか、学校にベースを担いで持って行ったことがあった。 学食で、その彼に突然「ベースやってるのか、今度一緒にやらない?」と声を掛けられた。 話しを聞いたらフュージョン系のバンドをしているらしかった。 当時の俺と言えば、東京のアマチュアベーシストの上手さと層の厚さにやられてしまい、バンドを組むなどと言う自信と勇気が無くなっていた時期だった。 だから、彼にも「ヒュージョンかぁ、俺には無理かも」と伝えた。 そうしたら彼から「是非一緒にやりたいなぁって言って欲しかったなぁ」と笑いながら返されたことがあった。 例え満足なベースが弾けなかったとしても、それが切っ掛けで別の道が開けたかも知れなかったのは、あれから何十年経った今でも残念だったな。 もう少し前に出る勇気があったら良かった。 その彼、今はもういい親父になっているはずである。 音楽も、きっと楽しくやってるに違いなな。 |