by simple-hama
【あの人は今・・・】


【あの人93】・・・さん

自分の祖父と付き合いのあった人である。
全然関係は無いのだけれど、元同僚の通夜に行った時に、「爺さんの通夜に来てくれたっけなぁ」と突然思い出したのである。
その時のことを、何か会話を覚えているわけでもないのだけれど、フッと思い出した。
その人は片腕が無かったから、大分不自由な暮らしをしていたと思う。
だから特に記憶に残っているのだろうけど、名前は覚えていない。当時からあだ名で呼ばれていたような気がする。
20年も前の祖父の通夜に、生前に親交のあった、懐かしい顔の人達が大勢来てくれていた。
その中の一人に彼もいた。
その時は、失礼ながらあまり裕福ではないだろうと想像させる服装だった。
それも致し方のないことだっただろう。
その通夜の時には、すっかりお年寄りになっていたから、ひょっとしたらもう亡くなってしまっているかも知れない。
祖父が小さな事業を手掛けていたころに、仕事を手伝ってくれていたと聞いた。
自分が物心ついた時には、もう祖父は事業から手を引いていたので、その当時の事は良くわからない。
けれど、その当時の人の何人かは、良く家に出入りしていたから、自分にとっては顔見知り以上の人達である。自分が大人になってから一度だけ、その人を見かけたことがある。
まだ祖父が存命の時だった。
売って収入を得るためだろうか、段ボールを回収しリアカーに積み込んでいた。
今でいう紙の資源回収である。
自分の子供の頃の記憶の彼よりは、年は取っていたけれど、相変わらず頑張っていた。



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