【あの人84】H・A君 彼とは中学の同級生だったが、中学を卒業して以来会ったことが無かった。 久しぶりに会ったのは、自分がまだ波乗りを始めたばかりの、夏の小泉海岸だった。 自分とは違う小学校からから山目中学校へ入学した彼とは、3年間で一度もクラスが一緒になったことは無かった。 もちろん顔も知っていたし名前だって知っていた。 けれども中学時代には話しをしたことが無かった。 高校もどへ進学したのかも知らなかったが、ちゃんとした社会人になっていた。 まさか海の上で波乗りをしながら彼らに会うとも思っていなかったが、自分自身も波に乗るなんてことは、中学時代にはとても考えられることではなかった。 遠い太平洋に台風が来ていたのかも知れないある日、結構大きなうねりが来ていた。 当時は小泉海岸の沖に、テトラポットが山積みにされていたが、その日は、そのテトラポットさえも越えてくるような大きなうねりだった。 それでも怖いとも思わずに、海の上にいた連中と奇声を上げながら、全然乗れないサーフボードにつかまっていた。 自分は小泉海岸で波乗りをしたのはその年だけだったので、その夏以来彼には会っていない。 何年か前に同窓会があったけれども、その席には彼は来ていないようだった。 もう波乗りはやっていないかも知れないけれど、どこかで元気に暮らしていることだろう。 |