【あの人82】F君 その昔、一関の街中に感じの良い喫茶店があった。 マスターは若くて、自分とあまり変らない年齢である。 そのマスターは、それ以前に別の場所にあるビルの2Fのスナックのアルバイトをしていたことがあった。 自分がまだ仙台で働いていて、友達が東京から地元に戻ってきたいて良く夜中まで飲んだ店である。 良くボブ・マーリィのライブビデオが流されていた。 その店を辞めた後に自分で店を開いた。 テーブルが2セットとカウンターが5席のこじんまりとした小さな店だった。 いつ行ってもお客がいないと言うことは無く、繁盛している店だった。 自分が今の会社に就職したての頃に、上司や先輩と良く喫茶店でコーヒーを飲んだのだったが、その上司もその店がお気に入りだった。 ある時、その上司から営業に来ないかという打診を受けたのだったが、笑ってやんわりと断った。 また、ある時は、その上司が仙台の工場立ち上げメンバーに加わったが、仙台へも誘われた。 もちろん、その時も笑って辞退した。 それから程なくして、一関の喫茶店事情が変化した。 ゆっくりコーヒーを飲める喫茶店が、軒並み店を閉じ始めたのである。 時代の流れだったのか、その彼の店も閉めざるを得なかった。 その後、何度か市内の結婚式場やホテルで会うことがあった。 やっぱりその道で働いているという。 最近は自分のほうがそういう場所とは縁がなくなってしまったので、その彼とも会うことがなくなってしまった。 最後にあった時から、もう何年経ったのだろう。 今でも元気で働いているのだろうか。 |