【あの人56】Y・Tさん 俺が小学校の時に入院していた西多賀療養所の隣の病室の一つ上の男の子だ。 彼はペルテスという病気で、普通に生活していると股関節の骨が崩れてしまうので、骨が成長し固まるまで活動を制限しなければならないという状況だった。そして、その病棟に入院していた多くの子供たちがその病気だった。 俺が入院していた病棟は下は小学生未満から上は6年生のまでの児童がいた。隣の病室にいたその男の子は6年生で俺の1つ上の学年、その病棟では一番年上ということになる。 最初の印象では体が大きく、どっかりとベッドに座っていたので、どこか牢名主のような雰囲気があった。もちろんそんな事は無かったが、こっちも入院したばかりで勝手が分からないのと年上の人ということから、そういう印象を持ったのだろう。 ひと月もしないうちに、その病室の人たちとも仲良くなれて、授業が終わると良く遊びに行ったものだ。 彼は模型を作るのが得意で、塗装もやり本格的なのだ。プラ模型も上手いと思ったが、鉄道模型も彼の範疇だった。割と大きくレールを床に這わせ、夜は部屋の電気を消して、模型に灯りを着けながら走らせるということも良くやっていた。 中学ぐらいになると物を作ることが苦手になってしまったが、その時は彼の模型好きの影響で俺もプラ模型を作ったりしたものだった。 あの病院に何年入院していたのだろう。その後、いつ退院したのかも分からないし、その後の彼の人生も知らない。 けれど、手先の器用さを生かして、どこかで物作りの仕事をしているのではないかと思っている。 そして、当時を思い出しながら書いていると、何ヶ月か一緒に過ごした子供達の笑顔がよみがえってくる。 みんな元気にしてるのだろうか。 |