【あの人39】Iさん そういえば彼女の名前を知らなかった。苗字しか知らなかった。 高校の時にバンド活動をやってた時に、同じサークルに所属していた1つ年上の女性である。 彼女は山崎ハコのような雰囲気をかもし出していて、自作の曲もハコの曲から大分影響を受けたみたいだった。 あるライブで俺のバンドに彼女をフューチャーして1曲だけやったことがある。彼女が書いた歌詞に俺が曲をつけたのである。 曲と言っても簡単なロックンロールである。「オレンジ・マーマレード」と言うタイトルの曲である。(笑) 実家はもう無くなってしまったが、平泉町の中尊寺の近くでドライブインを営んでいた。そして彼女には俺よりも2つ下の妹が俺と同じ高校に在籍していた。 平泉のお祭りになるとドライブインはすごく混雑するので、1度だけ駐車場整理のバイトを友達としたことがあった。お昼に出された賄いのカツ丼が、とても美味しかったのを思い出す。(笑) 俺が高校を卒業して一関を離れた後、彼女はどういう音楽活動をしていたのか知らない。所属していたサークルも空中分解に近い格好で消滅してしまったから、音楽活動をそのまま止めてしまったか、どこかへスライドして地道にやっていたかのどっちかだったろう。 けど、俺が久しぶりに彼女に会った時は、実家のドライブインの駐車場の片隅にカウンターとテーブル3つの喫茶店をやっていて、もう音楽はやっていないみたいだった。 仕事の関係で中々あの喫茶店には寄ってみる事もできなくなってしまったが、その後一度だけ行ってみる機会があった。彼女は相変わらず涼しい目をして微笑んでくれた。 あれから何年かして堤防用地になってしまい、ドライブインも喫茶店も姿を消してしまった。そして彼女との連絡も取れないままになってしまっている。 |