【あの人13】・・・・ 山の手線で電車内で出会ったおばあちゃんとその孫の女の子である。 その日俺は吉祥寺に住む友達の所へ遊びに行くために、京浜東北線・赤羽線を経由して池袋から新宿へ山の手線に乗っていた。車内は平日の午後ということもあってさほど混雑はしていず、ゆったりとつり革につかまりながら外の景色を眺めていた。 高田馬場を過ぎたあたりで、目の前に座っている女の子が俺を見ながらクスクスと笑っているのに気がついた。「どうしたの?」と聞いてみると、「着ているものが変だ」ということらしい。着ているものというより着方が変だというのだ。 その当時、トレーナーを裏返しに着るのが流行ったことがあったのだが、俺もそのようにオフホワイトのトレーナーを裏返しに着ていた。 そんな事から話が始まり、その女の子は小学4年生でその日は新宿のおばあちゃんの家に泊りに行くのだという。横に座っていたのがそのおばあちゃん、眼鏡の奥で目が笑っている、とても優しそうなおばあちゃんだった。 俺は新宿から中央線に乗り換え、おばあちゃんと女の子は新宿で電車を降りた。 2、3日吉祥寺の友達のところで遊んだ後、また蕨のアパートに戻るために新宿で中央線から山の手線に乗り換えた。 なにげなく車内のつり革につかまろうとした時、「こんにちは」という女の子の声。 その声に気がつくと、またあのおばちゃんと女の子の前に立っていた。 あの大都会、東京・新宿でまたも同じ組み合わせ。こんな偶然があるのだろうか。俺はなんだか嬉しくなってしまった。 前とちょっと違うのは、俺がトレーナーではなくポロシャツの上にジャンバーを羽織っていたことだった。 |