by simple-hama
【あの人は今・・・】


【あの人7】・・・・・・

もうずいぶんと昔の話しである。彼女の名前さえも思い出せない。
覚えているのは彼女が大学生という事、バイト先は喫茶店という事、からし色のダウンジャケット着て来た事。
専門学校の卒業を1ヶ月後に控えたある日、クラスのいつものメンバーと飲みに行った。 その日はメンバーだけではなく、合コンという話しなのでちょっと着飾って参加した。
入ったのはこれまたいつも行く東池袋のちょっと広めの店だ。
ほどなく合コン相手の女の子たちが入って来た。
「あれ、ちょっと人数が少ないなぁ」と、俺はここで戦線離脱。(笑)
早々と戦線離脱した他の二人と、これまたいつもの車の話しで盛り上がった。その当時も今の時代と変らず走る事が好きな連中はいるのだ。その前の年に行った箱根ターンパイクや筑波山有料道路、首都高など定番のコースの攻め方、はたまた族のブッチギリ方まで議論は白熱していた。(汗)
場がそれぞれに盛り上がって来た頃、その彼女が俺の隣に移動して来た。
車の話しにでも興味があるのだろうか、何に興味を引かれたのか俺達のグループに加わった。きっと俺に興味があるのだろうと勝手に思いこみ、その時から彼女の隣で飲んだ。(笑)
彼女は次の日、朝からバイトだというので終電が無くなる前に池袋から気持ち的に彼女の家まで近い新宿に移動して、また飲み始めた。「寝不足じゃバイトが辛い」という彼女を説得して、結局明るくなってから始発でみんなそれぞれ散り散りに帰って行った。
卒業式には謝恩会というのが付き物というのは知らなかった。
当日、クラス全員と担任の先生を囲んで1次会をしたのだが、その記憶は全然残っていない。
2次会をいつものメンバーでいつものところでするというので、ちょっと酔っぱらいながら東池袋の店まで行った。またこの前の合コン相手のメンバーも来るという。
今晩でこの連中達とも彼女たちともお別れである。それぞれが違う道を歩き始めるのである。自然と話題もそういう話しになり卒業式の晩という雰囲気だ。
「住所ぐらい、教えなさいよ」と彼女。
覚えたての新しい住所を紙に書き、彼女に渡した。
いつものように池袋から新宿に移動し、そこでいつものように朝まで飲んだ。
新宿駅で俺は外回り、彼女は内回り。山の手線のホームでお互いにお互いを見送った。
そして2日後、俺は仙台に引っ越した。


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